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あずさわ日記

[Zの組曲]try again

此の作品は架空の物語りで、実際の人物団体とは関係のない創作です。

20XX年温暖化現象の極みに至り、
地球の各地で猛暑による甚大な被害が続出した。
7月10日印度のニューデリーで摂氏40℃の熱風が吹き荒れた。
前年の晦日でも、西欧各地で本来極寒の季節の筈が、ルクセンブルグ、
ボン、パリ−でも、馬鹿陽気であった。
都市ではあちらこちらで、
姦しくサイレンの音が鳴り響いた。しかし、
殆どの都市では、
この猛暑には行政も成す術は殆ど無かった。
と或日、パリ−の町中で、いわく有り気の男達が、
メトロの地下道を血眼になって、歩き回っていた。
「おいっ。指令は…」
「Xを探すんだ。」
どうやら、相当の事件らしい。
「あっちだ。」
男達は、大変な勢いで地下道を走り回った。
「ね、君。どうしたの。」
「何だ。」
野次馬もどきの男が目付きの悪い男に、執拗に聞いた。
「警察か。」
「いいや、ネタが欲しいんだ。」
「新聞屋なら、引っ込んでな。」
男は無理矢理突き飛ばされ乍ら悔しがった。
「ええいっ、くそう。」

インドは人口10億人を超える国民は、多様な人種、言語、
宗教をもっている。ヒンドゥー教徒が多く、
カースト制度の影響は今でも残り、
階層や貧富の差が大きい。
ニューデリーの町へ降りると、
雑踏の中を物凄い勢いで車が走る。
日射しは非常に激しく、特に最近は温暖化の影響が甚だしい。

広い国道を数台の高級車両が駆け抜けた。
「すげぃ車。」道端の少年も何事かと云う眼差しで見つめていた。
「どっかの金持ちさ。関係ないよ。」
真っ黒いクラウンは、この辺りでは珍しかった。
「サー青山。」
「宜しいのですかな。」
「…。」
「そうですよね。判ります。」
男は微笑みながら。
「やるしか無いでしょう。」
「此処迄来たら。進むだけ。」
「我が国の威信を賭けて。」
「そう。大いに賭けて下さい。」
「賭けると云っても、是は博打では無い。」
「そう。然り。」
車中から覗くデリーは強烈な白い光で蒸し風呂の様だった。
「運転手さん。」
「はい。」
「エアコンを切って下さい。」
運転手は驚いてスイッチを切った。
「此処から始めなくては」
サー青山とか云う紳士は初老であるのか、
毛髪は白い物が混じって居た。

車はやがて、白亜の石造りの城門の中へと飲み込まれて行った。
門を通り抜けると、広い車止めでドアから、
数人の男達が降りて来た。
古風な屋敷からは、執事らしき壮年の男が、
甲斐甲斐しく迎えに出て来た。
「お待ちかねでございます。」
男達は無言で長い廊下を進み、
屋敷の主人の待つ応接に向かった。
「良くおいで下さった。」
広いゲストルームで、多様な関係者が集って居た。
部屋の前方には、個人の屋敷にしては、
大掛かりなモニターが数台設置してあった。
「これは…。」
このゲストルームに呼び寄せられたのであろう、
二十人を越える人々は、あまりにもの設備に、
驚愕する他はなかった。

「皆さん。良くいらっしゃいました。此処にお集まりの皆様は、
私が、此の人と、見込んでお招きいたしました。
各々が、非常に多忙とは存じの上でのお願いでした。」
「私の事は男爵と呼んで頂いても結構です。
稀にほら吹きと陰口を叩く輩も居ますが。」
其処で幾人かの客が笑った。
「冗談は此れくらいに致しましょう。
私が皆さんを呼びしたのは、ご存じの様に、
有史以来の人類の難局を、我々人類がどう潜り抜けられるか。」
其の時一人の男が云った。
「儂ゃ忙しいんじゃ。ほら話しは沢山じゃ。」
「アメリカのお方は、今回の危機に、一番責任があるんじゃない。」
「まあ、まあ。暑くならない。只でさえ、温暖化で堪らないんだ。」
「そんな事は国連の考える事じゃ無いかね。」
「はっはっはっは。」
「国連が何の役にも立たない事は良く判って居るんじゃ無いかね。」
「そうだ。国連が出来て、中東も、ベトナムも、どうしたんじゃ。」
「まあ、皆さん。お怒りはごもっともですが、
今日お集りの皆さんは各々お国で一級の財団を構築の方々、
紳士的に参りましょう。」
「で、問題は簡単。この
温暖化現象を、短期間で、どう終結させるか。」
室内は重苦しい空気で一杯になった。
一人の英国風の紳士が云った。
「で、男爵とやら、仰る貴方。勝算はお有りか。」

「儂は自分のあだ名の《ほら吹き》は愛着がある。
しかし《ぼんくら》とは呼ばれたく無い。」
「ふん。勝算あり、と云う事かね。」
「そう思ってくれたら嬉しいですな。」
「…。」
「では、先ず温暖化の元凶CO2をどうするか、について述べたい。」
「此の捕らえどころの無いCO2Hは、現代社会に大いに貢献して居る事はご存じですね。」
「ドライアイスの事かな。」
「其れは話が早い。」
「両極の膨大な氷りが消滅しつつある今、
私は代わりにドライアイスの大陸にしたいと思って居る。」
「早い話、此の地球環境の中から、大量のCO2を引き出し固めて凍結すると云う話だ。」
「はっはっはっはっはっはっはっはっはっは。愚かな。」
「子供騙し。」
「ほら吹きは本当だった。」
「じゃ聞くが君はドライアイスが何から造られるか知らんのかね。」

「ドライアイスに目を向けたのは良いが、
ドライアイスは石油精製の副産物であるCO2から採れる故、
ドライアイスを大量に造るとなると、大量の石油を精製する事にならんかね。」
すると男爵は笑った。
「はっはっはっはっはっは。此れは失礼。」
先ほどの初老の学者風の紳士は烈火の様に怒りを現した。
「本当に申し訳無いが、其れは私も考えました。
では大気中に大量に放出されたCO2は何処は行ったか。
多くは大気中に飽和状態で漂って居る。
しかし大気中のCO2の量は全体の1%以下。
其れを回収する事は容易では無い。」
「それでどうするね。」
「儂は全く別の事を考えた。」
「それは。」
「ラ・メール」
「我がフランス語で《海》の事だ。」
フランス系の財団幹部が、興奮して叫んだ。
「そう。海です。」
「珊瑚でも焼くのかい。」
「其のような事はしない。」
「なに。冗談じゃ。」

「大気の中からCO2を回収する事は、
気が遠くなる程大変じゃ。
もちろん森林を広げ、
光合成で本来の機能を復活させるのが一番良いに決ってる。」
「しかし、大量のCO2の行方は、先程の珊瑚礁の生成過程で取込まれ、
また其れ以上の膨大な量が海水中に取込まれておる。
海は地球の面積の七割で、空気より海水の方が当然密度が濃い。
膨大なCO2が取込まれて居ると云う訳じゃ。」
「なんじゃ。其れでは海水を煮詰めるのかい。」
「はっはっ。其れじゃ大量の食塩が出来てしまう。」
「もっと容易で、熱エネルギーに頼らない巧い方法がある。」
「そんな旨い話が有るのじゃろうか。」
「勿論ありますとも。」
「一つ聞いてみたいね。」
気取った英国紳士が云った。
「申し上げよう。大量に汲み上げた海水に、
圧力を掛けるのじゃ。
圧力を掛けると海水中に溶け込んだCO2が、
どんどん、湧いて来る事に気が付いたのじゃ。」
「そうか、海水は石油と違い、世界中に無限にある。」
「そう云う事ですな。」

「ひゃほ〜っ。」
「ブラボーッ。」
「しかし、聞き給え。事はそんなに簡単では無い筈。」
「そう。其処で此の様に、世界中の賢人の皆様をお招きさせて頂きました。」
「金の無心かね。」
「…。」
「此処にCO2による温暖化現象撲滅の《Z財団》の旗揚げを宣言する。」
「…。」
「詐欺じゃ無いのかね。」
「儂等はそんな、巧言に騙されんぞ。」
「そして、膨大なドライアイスをどうするんだ。
どうして保存し、運ぶのか。」
「南極大陸に巨大なプラントを構築する。海水は
南氷洋からダイレクトに汲み上げる。」
「それで。」
「南極大陸に21世紀の大ピラミッドを建設する。」
「ドライアイスでかね。」
「そう。そして其の表面は断熱シートで被う。」
「其れが君の夢かね。」
「世界一金の掛かる壮大な夢。」
「其れで男爵はいくら儲けるつもりかね。」
突然男爵の顔は険しく歪み、強烈な相手を射据える眼で睨みつけた。
しかし、さっと表情を和らげると。
「これは、儲ける為の財団じゃない。」
「ふん。そんな馬鹿な話に儂は乗れん。」
「乗る乗らぬは構わないが。儂達は皆運命共同体じゃ。」
「生きるも、死ぬのも。嫌じゃが一緒じゃ。」
「儲けとかそんな事より、文明の美酒、
美食を自分達だけで独り占めして来た、贖罪の大事業じゃ。」
「果たして成功するかな。」
「其れは儂は請け負わない。」
「そりゃ、そうじゃろう。」
「よし、儂達は一緒にやるぞ、
果たして生き残れるかどうか判らんが。」
「アメリカのY系財団は、買った。」
「我々印度系財団も乗った。」
「日本の青山財団も買いましょう。」
「露国の財団も。」
「OK。皆さん有難う。皆さんの総意で、
この《Z財団》を設立致しましょう。」
「技術的な事は、後で煮詰めよう。」

20XX年。9月6日カイロ。いわく有り気の男達が、
空港内の地下道を血眼になって、歩き回っていた。
「おいっ。指令は…」
「Xを探すんだ。」
どうやら、相当の事件らしい。
「あっちだ。」
男達は、大変な勢いで地下道を走り回った。
「ね、君。どうしたの。」
「何だ。」
野次馬もどきの男が目付きの悪い男に、執拗に聞いた。
「警察か。」
「いいや、ネタが欲しいんだ。」
「新聞屋なら、引っ込んでな。」
男は無理矢理突き飛ばされ乍ら悔しがった。
「ええいっ、くそう。」

こちらはアメリカ、ロサンゼルス。
赤や青のネオンに彩られ、観光客の心も、
晴天のロスとは違う魅力を与えて居た。
相変わらず混み合う高速道路を走る、
一台のイエローキャブ。
一人ダークグリーンのスーツに身を包んだ男が、
雨のロスをじっと眺めて居た。  
「お客さん。着きましたぜ。」      
「うむ。」               
コンクリートの高い塀で囲まれた
古い屋敷の自動のゲートの中に消えて行った。    
重厚な扉から、屋敷の執事らしい男が迎えに出た。
中に入るとクラシックな調度を、柔らかい照明が照らして居た。       
「お帰りなさいませ。」        
「…。」               
「お待ちです。」           
「うむ。」               
更に奥の扉が開くと、近代的なオフィスだった。                 
「ボスお帰り。」          
「Mr.がお待ちです。」          
厚い眼鏡と薄い唇の男が椅子に掛けて居た。                 
「出来て居るか。」           
「はい…。」
「Z財団に参入で、我々の新しいビジネスの目論みが纏まりました。」
「極地方に新たなプラントを建設し、膨大な量のドライアイスを造る。
そう。取り合えず、テストで6万トンの生産として、
その生産に必要とされるCO2を圧縮するとだな、
大元の動力を太陽エネルギーと原子力の二本立てで、
行くとする。一年間で凡そ0000000kcalのエネルギーが
極地方の大気に放出される。
しかし其れではこのプランニングの意味が無い。
環境悪化を助長させる。」
「この地下プラントで発生する熱エネルギーは、
一切地上の大気には放出しない。」
「回収してドーム中のエネルギーセンター内で熱を凝縮し、
100%電気エネルギーに変えよう。」

「此処からが、中国の最新技術との競合だ。
マイクロウエーブに変換し、
宇宙の静止衛生の巨大なパラボラで集め、
地球のエネルギー不足のエリアへ送り活用。
過剰なエネルギーは、決して地球へ戻さず、
宇宙の彼方へと放出。」
「其処が我々の財団の収益の要だ。」

此処は南極のX地点である。夏の極地方は夜が無い。
いわゆる白夜である。
此の季節になると氷に閉ざされた大陸にも
何かしら華やいだ風が流れる。
「おいっ。連絡は未だか。」       
「いや、まだだ。今○○地点まで来てる。」
「愈々だな。」            
「しかし、こんな南極の地の果てまで来て、
日本のシールドが生きるとは考え無かった。」                
「大松の建機も超大型級が来て居るらしい。」                 
「ちょっとしたZ財団景気かな。」    
「此の世界一金を喰うプロジェクトも
世界中の景気を活性化させて居るらしい。」  
「大したもんだ。」          
「しかし、此の百年、
いや数世紀に一度の大仕事が今始まるとは、
感慨が深いものだ。」
「俺は此の仕事の為、十年は国に戻らない覚悟だ。」              
「うっは〜大したもんだ。」      
「はっはっはっはっはっはっは。」   
「女房が恋しいよ。」
「定期便で帰れるさ。
「しかし…。」            
「しかしだね。」           
「うん。そうだよ。」
白夜の大陸に久々の強風が吹き寄せた。
「矢張り此処は内地とは違う。」
「いや、此処は地獄や。」
「こんな馬鹿げた事、誰が考えたんじゃ。」
怒りと、何とも言えぬ使命感の喜びが交錯する不思議な感じだった。

フランスの科学省では、昨年暮れから公開で、
実験が行われて居た。
フランスでは海洋研究は盛んで、
二十世紀にはクストー博士が中心となり、
チャレンジャー号の探査は国際的にも評価は高かった。
今行われて居るのは、
大量の海水タンクに圧力を掛けて、
できるだけ効率良くCO2を取り出す為の実験であった。
「おおい。そんなに急激に加圧したら、
巨大タンクは爆発するぞ。もっと慎重にやるんだ。」                
「すると、タンクから引き出された太いパイプの中を
ゴーッと立続けにCO2のガス体が、
流れ出て来るのが分った。」       
「良いぞ。その調子だ。良質のCO2なら、
ピカピカのドライアイスが出来るぞ。」  
「そいつは他国の奴等の仕事だがな。」 
「はっはっはっはっはっは。」

ある日の午後、太郎は父親に聞いた。  
「ねえ、お父さん[Z財団]のZて何の事。」
「何だと思う。」           
「判らない。」            
「お父さんも良く判らなかったけれど、良くお聞き。」              
「うん。」               
「太郎は今、小学生五年生だけど日露戦争を知っているかい。」          
「テレビで昔やってたよ。」
「明治三十八年に始まった日露戦争の時  
「皇国の興廃コノ一戦ニアリ、
各員一層奮励努力セヨ」
と其のZの信号旗を掲げ。   
日本海軍は旗鑑三笠艦上東郷司令長官以下奮戦したんだよ。             
あの無敵とうたわれた帝政ロシアの
バルチック艦隊を撃破したんだよ。        
その後に故事にちなみ生死を掛けた場合に
「Z旗を掲げる」の慣用句となったと言われて居るんだ。」           
「今、環境問題で、世の中大変そうだね。」
「そう、今の侭だと太郎が大人になった時代、大変な事になる。」        
「環境問題と人間の最後の戦いだね。
「…。」               
「どうしたのお父さん。」      
「ん。いや、こんな時代にしてしまった
大人達の一人として、
太郎と同じ世代の子供達に申し訳無いと思ってね。」         
「仕方無いよ、お父さんばかりが悪いんじゃ無い。
皆で考えないとね。」      
「ありがとう。太郎。」

広大な宇宙空間は真っ暗闇の中、銀砂をまぶした様に輝いて居た。          
目の前には蒼い水球が静かに横たわって居た。                  
いつまでも、いつまでも沈黙が続く中、
振り返ると輝く球体の前に巨大な人工構造物が、
姿を現し始めて居た。        
「Mr.クロ」             
「ハーイMr.トム」          
「そっちの端を掴んでくれ。」      
「ok」              
「…。」               
「おい。 BGMを入れてくれ。」    
「OK、チャーリー。」         
 突然、広大な宇宙空間に大音量のシンフォニーが流れた。             
「はっはっはっはっはっはっはっは。」 
「こいつは良い。」          
「美しき 蒼き ドナウ」       
「こんなにぴったりの曲は無い。」   
「ミッキー、中々ユーモアが有るね。」 
「早く終えてお家へ帰りたいよ。」   
「目の前に、あんなに近いじゃないか。」
「…。」               
「ミッキー早く帰りたいんだろう。」  
「その話は無しよ。」        
「OK」               
「良いな、地球。矢張り俺達のマザーだ。
なんか、泣けて来るね。」        
「さあ、さあ。感傷的に成ってばかり居られないぜ。」              
「仕事、仕事。」           
 其の時、
作業員の黒田に異変が起きた。急にもがき始めた。            
「ちっ、スペースダストかよ。」    
「大丈夫か。」            
「急いでボートに戻れ。」       
「ああ。」               
高速で飛び回る宇宙のゴミは全く厄介者だ。

20XX年。3月25日メトロTOKYO上野駅。
いわく有り気の男達が、
駅構内の地下道を血眼になって、歩き回っていた。
「おいっ。指令は…」
「Xを探すんだ。」
どうやら、相当の事件らしい。
「あっちだ。」
男達は、大変な勢いで地下道を走り回った。
「ね、君。どうしたの。」
「何だ。又お前か。」
野次馬もどきの男が目付きの悪い男に、執拗に聞いた。
「警察か。」
「いいや、ネタが欲しいんだ。」
「新聞屋なら、引っ込んでな。」
男は無理矢理突き飛ばされ乍ら悔しがった。
「ええいっ、くそう。」  

深いネービーカラーの海。        
その荒波を蹴立てて、鋼鉄の艦艇が進む。 
一隻、十隻、三十隻。         
様々な国の旗をなびかせて、
南氷洋に世界の軍艦が勢ぞろいして。          
しかし是は国際紛争や、その為の演習ではない。
さて、フランスの海軍の旗艦から、
数機の大型へりが飛び立った。          
南極の蒼い空を四方から、群れを成して飛び立って来たヘリ。            
南極の歴史始まって以来かって無かった出来事であった。              
世界の要人を乗せてへりは南極の
[Z財団]特設のエアターミナルへ集結した。    
夏とは言え南極では、かって無い程の気温の上昇であった。             
氷の大陸と云われた大地もあちこちに土が見え隠れしていた。
果たして環境悪化の対応は間に合うのだろうか。
別便で各国のジャーナリストも集まり、
取材攻勢が始まった。
其の時、突然上空に大音響がして人々を驚かせた。
式典開始の花火の音であった。
式典は環境を考え、
関係者とマスコミのみで、
一般人は全てテレビで見る事となった。
厳かに式典が挙行されると、
会場奥の岩盤に造られた巨大なゲートの扉がせり上がった。
人々の驚く中、地下のプラントから、
何か大きなマシンが唸りを上げて進んで来た。  
巨大トレーラーに引かれ、8メートル立方の白い塊であった。            
余りにもの大きさに観る者を唖然とさせた。
トレーラーの行く前は広く開けられ、
その通路の両側には取材人が駆け寄った。
一棟のビルにも匹敵するドライアイスの巨魁が静々と移動。             
予て決定して居た大ピラミッドの第一の礎となった。
「世界中の皆さん。今ここに八年来の大事業。
その第一のステップが始まりました。 
果たして此の前代未聞の計画で我々の
人類の負の遺産CO2環境破壊が解決するのでしょうか。」

宇宙は長い歳月をかけて、
除除に変転する。
そのサイクルは数万年、数億年、
人間の日々の歩みに比べ遥かに悠然とした流れである。
遠い記憶の果て、深い眠りから誰かが名を呼ぶ声がする。
「男爵、男爵。起きて下さい。」
「何事だ。」             
「明日は世界の著明な方を、
お招きして何やら財団を立ち上げるとか。」       
「其れがどうした。」         
「ご準備がございますでしょう。」    
「お前に云われんでも…。」      
「いいえ、お客様です。」       
「そんなら、早く言え。」       
「X氏です。」            
「えっ。よし、応接へ。」       
「もう、お通ししています。」      
男爵は着替えて応接へ向かった。
其処には白髪の老翁が紫色のパイプの煙りを燻らしていた。                 
「無沙汰をした。」          
「まあ、掛け給え。」         
「男爵。」              
「はっは。其の名は…。」       
「まあ、良い。」           
「最近何とか言ったが、財団とか立ち上げて、
偉い勢いだそうだが。」      
「…。」               
「あれは止めたまえ。」      
「…。」               
「人間の力を過信するものでは無い。   
自然の叡智。神の力は人間にコントロール出来るものでは無い。」        
「…。」               
「もし、君の、君達のピラミッドとやらが、
大気温の上昇に追て行けなくなったら、
そいつは一斉に溶けてしまう。どうするね。」
「人間もあらゆる生物が、窒息死だよ。」 
驚愕する男爵の顔は白蝋の様に真っ白になってしまった。             
「判りました。」          
「《イカロスの羽》みたいなもんじゃ。
明日の発起は取りあえず無しにするんだね。」 
男爵の顔はくしゃくしゃになってしまった。長い長い夢だった。          
(昔の諺にあった。生兵法は怪我の本。)

[矢張り、何ですね。之だから素人は…  
まあ、お許しを。矢張り素人判断は空きだらけ。
あちこちが穴だらけ。お恥ずかしい限りです。]

CO2s処理アイデアは様々です

化研(水戸市、蓼沼克嘉社長)は、
海水中にとけ込んでいる大量の二酸化炭素(CO2)を電解処理で固形化し、
海底に沈める新しい技術を開発した。

 開発したのは「除炭酸システム」。
海水に含まれるカルシウムイオンと炭酸イオンを
海水中に設置した電解槽で電解反応させ、
不溶性の炭酸カルシウム(CaCO3)を生成する。

 この過程で海水中の炭酸イオン濃度が
CaCO3の生成量に比例して低下。
CO2吸収余力を高めた弱アルカリ性の海水が
大気中のCO2を吸収する仕組みだ。

 生成されたCaCO3粒子はそれ自体の重みで
海底へ沈殿。海底1000m付近に堆積(たいせき)させ
「CO2を生物圏から隔離する」(蓼沼克嘉社長)という。
茨城県水産試験場(ひたちなか市)を使って基礎技術を開発し、
基礎技術と関連装置の特許を出願した。

 同技術を実用化、海水を通過させる電解槽と
発電施設を搭載したメガフロートのような巨大装置を
2千億−4千億円かけて建設すれば、
「日本が削減義務を負う年間のCO2量、
約1億8千万トンの削減が理論的に可能」
(蓼沼社長)という。

 (日経産業より)

CO2海洋隔離技術開発の現状

1997年12月に採択された京都議定書が
8年余り経た本年2月16日に発効した.
これを契機として,CO2の排出抑制に向けた様々な取り組みが
一段と活発となってきた.その1つに,
大幅なCO2排出削減を可能とするCO2海洋隔離がある.
温暖化対策としてCO2を海洋に隔離するというアイディア1)
は,1978年に米国の研究者により生まれたものであるが,
1988年の米国上院における気象学者の
「温暖化懸念証言」後に注目されるようになり,
1990年代初頭から我が国を中心として実験的研究が進められた.
1997年頃までの研究概要については,
本誌の前身である日本舶用機関学会誌2)
で著者らの拙稿が掲載されているので,
今回は,主としてその後の進展を取り上げることとしたい.

(NMRIより)

《渚にて》

真っ暗な浜辺でした。空には満天の星が瞬き、
涼やかな海風が吹いています。
銀色のメダルのような月が煌々と冴え渡っています。
「ねえ、あれ何かしら。」          
「どれの事。」             
「あの、浅瀬で何か、動いて居るわ。」  
 男の方はじっと、其の指差す先を見つめて
見た。                 
「嗚呼、あれかい。あれはFB-ORSシステムだよ。」                  
怪訝な顔で               
「何の事。」              
「あれは最近開発された、環境ロボットシ
ステムさ。                
良く見てごらん。水面近くで何かして居るだろう。」                 
「大きな蟹みたい。」          
「はっはっはっは。」          
「何か植えているみたい。」       
「そう、あれはCO2問題で開発された
バイオロボットの一つで此の辺りの海岸線に、    
完全自動制御でマングローブの苗を植えて居るんだよ。」               
「そうか、熱帯林を再生して居るんだ。」 
「そう。凄いね。」           
「温暖化の勢いが早いので此れも機械化でスピードアップさ。」             
納得した彼女は             
「でも、こんな何も無い海岸でどうして動くのかしら」                
「あそこに大きなフロートが浮かんでいるだろ。」                 
「ええ。」               
「あの上の光ってるのが…。」      
「判った、太陽光パネルね。」      
「そう。充電しているからエネルギーが切れないのさ。」               
「へー納得。」             
「温暖化のスピードが勝か、植林運動が勝か。」                 
「ロボット君もがんばって居るのね。」  
「其れって海だけなの。」        
「いや、砂漠化が進んで居る今、ゴビ砂漠でも、サハラでも、
今はロボットの植林部隊が二十四時間体制で頑張って居るよ。」
「何だか、アトムやスターウオーズの世界みたい。」
「そうだよ。此れが現実なんだよ。
皆日本のロボット技術だよ」
「アトムワールドの展開で今、
地球の人類は、あらゆる生物は再生するんだ。」
「何か希望が出て来たわ。」        
其の時南の空に、銀色の小さな光が流れた。

アイスクリームの保冷や、舞台のスモーク効果など、
いろいろな方面で利用されているドライアイスは、
炭酸ガス(二酸化炭素)を凍らせたものだということは皆さん
ご存知だと思います。
アンモニアや石油精製時に発生する粗製炭酸ガスを
高純度に精製し、冷却加圧すると液体状になり、
これを低温下でノズルから噴出させると、
雪のような結晶状態になります。
これを固めて形を整えたものがドライアイスと呼ばれるものです。
炭酸ガスを固体にすることには、
1834年にドイツの化学者チロリェーが成功していて、
その後、製法が改良され1895年に、
イギリスの化学者エルワシーとヘンダーソンの二人
が製法特許を取得しています。
1925年にニューヨーク郊外で
「ドライアイス・コーポレーション」
が工業生産を始め、固体炭酸を「ドライアイス」
の商品名で発売したのですが、
これがそのまま一般名となってしまいました。

「よーそろ〜。」

暗い鉛色の海を白い作業船が進んでいる。
甲板の上は雨天にも関わらず、大きなドラムが寸断無く
ロープを繰り出している。艦橋では操舵室の当直が慎重に指示をしていた。
「よそろ〜。」
「船長。調子は如何ですかな。」
「嫌な仕事だ。」
「こんな仕事はうんざりだ。海の男の仕事じゃない。」
「又、始まった。」
「まるで百姓の仕事だよ。」
「そう嫌がらないで。此れが世界の為。」
「ふっ、世の為か、人の為か知らないが、
何でこの海の中の男の中の男の我が輩が、こんな仕事を…。」
「船長。お気持ちは良く判るが、本当に貴い使命なんだ。」
「温暖化だろ。環境問題だろ。」
「そう、良くご存じで。」
今此の船は、何をして居るのかご存じ有るまい。
今地球の環境破壊で大気中の CO2が際限無く増えつつある。
其処で乗出したのが、
「Z財団」だが、彼等の企画した、CO2削減の事業の一つに、
大洋の海水中からCO2を取り出す画期的な構想で始まったのが此の事業である。
此の作業せんでは、海水面から二十メートルの深さに、
フロートや、ブイの付いたロープを繰りだして居る。
一体何事かと云うと、此のロープには拡大して見ると判るが、
海藻の苗が一緒に巻き込んである。
此のロープを延々と、大陸棚の浅部に張り渡す。
すると軈て其れらの海藻の苗は、海水中のミネラルや養分を吸収して成長する。
海藻も成長する間中、ずっとCO2を吸収し、酸素を排出する。
海藻は長いもので、昆布を見れば判る様に三十メートル程までに成長する。
栄養は海水から直に摂取出来るので手が掛からない。
海藻は食べてよし、肥料、飼料、新エネルギーの材料にもなる。
世界中の海は海藻の成長に最適で、海は全地球の七割もある。
また海藻の群生は魚の孵卵場、幼魚の生育の環境にも適当である。
CO2削減以外に此れだけの功徳がある。
おう、そう云って居る内に雨も上がった様じゃ。
「船長。気を落とさず、頑張っておくれ。」

「よーそろ〜。」

電力の必要なユーザー衛星に対し、必要な電力をマイクロ波によって供給する発電衛星構想。地上における発電所と役割を同じくする。この構想の利点はユーザー衛星が巨大な太陽電池を自ら広げずとも必要な大電力を得ることができる点にある。すると大電力を用いながらマイクロg環境の要求を満たすことが容易となると考える。また、地上における自家発電に対する発電所システムと同様で、コスト削減につながると考える。宇宙機ー宇宙機間での送電となるため、生体への影響を考慮する必要が小く、SPSを実現する1ステップとなると考えている。

雨のしょぼ降る赤坂の高層ビルが、瞬くネオンに浮かび上がって居る。
「男爵、男爵。」                すっかり打ちのめされ、カウンターに俯して居た彼に、Mr.が声を掛けた。            「……。」                 

「はっはっはっはっは。」          

「……。」                   「男爵らしくも無い。」            「Mr…。」                 「気を取り直し給え。」           

「……。」                   「私はそんな君が大好きだ。」          店の女の子が座ると。          

「済まん。ちょっと外してくれ給え。」       女の子は慎ましく去った。         

「そんなに、しおらしく成るとは思わなかった。」 「Mr…。」                  「私は君に云いたい。人類の運命は我々大人達の手に掛かって居るのだ。夢を捨てては成らない。」     男爵は首を捻った。     

「どう云う事でしょう。」           「君。ピラミッドを日本語で何と云うか知って居るね。」                     「金字塔ですね。」               「そうさ。その姿が漢字の金の一字に似て居るかららしい。君ピラミッドは人類の歴史の偉大なモニュメントだよ。」              

「……。」                  「CO2を取込む珊瑚虫は表面が実に複雑多岐で、総表面積が広いのでCO2を取込むのに好都合だった。」  「……。」             

「逆にピラミッドの構造は単純な四角錐だ。」  「!」                     「構造がシンプルなピラミッドは、表面積は小さいと言える。」                

「……。」                   「仮にドライアイスのピラミッドを造っても、一個、一個のブロックを緻密に重ね、極力隙間を無くし、表面を保冷材で被えば、温暖化の大気の上昇のスピードに人類は勝てるかも知れない。」    

「Mr.…X。」                  「はっはっはっはっはっは。」         「今、CO2問題は色々なプログラムが組まれて居る。大切な事は、人間として…。」       

「傲慢に成らない事。用心深い事。やり直しは効かない。」                   

「人類の偉大な歴史を愛し、継承し、至誠心を失わない事。」                  

「はっはっは。男爵。流石だ。」        「いいえ、お恥ずかしい。」          「此処で終われば、《ほら吹き男爵》の名折れじゃよ。」                    「Mr…。お株を取られました。」        「はっはっはっはっは。」
「もう一つ。エネルギーの循環利用を上手にやり給え。」                    「其れで、膨大に発生する熱エネルギーが将来の経済効果と、活力に成る。」           「呉々も極地方の大気温を上げない事。」    「承知いたしました。」            「サヨナラ。」                「Mr…。もう、お別れですか。」        「淋しそうな顔は男爵らしく無い。」      「アディオス。」「……。」
20X7年。5月5日ドイツボン駅。いわく有り気の男達が、駅構内の地下道を血眼になって、歩き回っていた。
「おいっ。指令は…」
「Xを探すんだ。」
どうやら、相当の事件らしい。
「あっちだ。」
男達は、大変な勢いで地下道を走り回った。
「ね、君。どうしたの。」
「何だ。又お前か。」
野次馬もどきの男が目付きの悪い男に、執拗に聞いた。
「警察か。」
「いいや、ネタが欲しいんだ。」
「新聞屋なら、引っ込んでな。」
男は無理矢理突き飛ばされ乍ら悔しがった。
「ええいっ、くそう。」 


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