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あずさわ日記

コリントスの星

古代ギリシャはアテナイ、
テーバイ、
コリントスなどのポリスの立ち並ぶ、
エーゲ海、
イオニア海が潤す、
いにしえに栄えた國であった。
アテネはサロニコス湾にめんした、
最大の都市で有ったが、
エーゲ海が潤す、
多くの島々は昔から変わらない佇まいを成していた。
この村はイリソスと云う、
古代から現存する村であった。
ギリシャは雨の少ない温暖な地で、
古来から漁業の盛んな國である。
この小さな村には、
ロコスと云う、
七歳の少年が居た。
人見知りの有るはにかみ屋、
色白の母親似の小さな男の子であった。
少年は今日も学校が終わると、
友人達と近くの海岸で、
ボール遊びをしてから帰宅するのだった。
「ロコスや、ロコス。何処居るんだい。
又、道草喰って居るんだね。」
その母親の愚痴が始まる頃、
少年は帰って来るのだった。
「御免よ母さん。
ちょっと用事があって。」
「その話はもう聞き飽きたね。」
「もっと増しな答えを考えるんだね。」
「…。」
そんな時父親が帰って来て、
いつもロコスの弁護をしてくれるのだった。
或日ロコスは、父親のお使いで、
峠を越えて、
隣の町
ソルンまで出かけた、
街道を歩いて居ると、
蒼い蒼いそらが、
限り無く続き、
サロニコス湾から、遠く
エーゲ海も
遥かに霞んで
見えた。
「…。」
其の時ロコスは何かの鳴き声を
耳にした。
思わず見上げると、
天空に
何か
白い影を見た。
雲では無い、
何物かが、
視界を横切るのが
分かった。
気のせいかと振り返ると、
近くの岩山の峰に白い
生き物の様なものが
はっきりと見てとれた。
何だろう。
そう思った瞬間。
消えると。
背後で
「見たな!」
声に成らない声が、
脳髄の中で囁いた気がした。
(大分以前に《未定》と云う事で発進した
物語りが、忘れ去られて居ましたので、
取りあえず進めます。ネタが切れた時が
終了です。悪しからず。
他にも何か有ったきがするが。はて?)
其の時
ロコスは、
「君は誰?」
と思った。
すると言葉に成らない内に、
「私は、呼び名は無い。」
と、ロコスの頭上に大きな生き物が
舞い降りた。
「あっ。」
ロコスは驚いた。
「ペガスス!」
「はっはっはっはっは。
そう。ペガススとも云う。
東洋では天馬とも云う。」
ペガススは白い、
眩しい、大きな翼を広げると、
ロコスの前に姿を現した。
「大変驚いた様だが、
お前には私が見えても、
誰にでも見えるものでは無い。」
「…。」
「驚いているな。」
「…。」
「友だちに成ろう。」
ロコスは聞いた。
「ペガススがどうして僕の前に…。」
「はっはっはっはっは。
そう。気紛れさ。」
「気紛れ?」
じっとロコスを見つめたまま、
心に語りかけた。
「人生に、おっと私は人間じゃ無いが、
人生に気紛れは大切なものだよ。」
「…。」
「君には未だ判らない事かも知れない。」
「友だちに成れるかい。」
「其の前に、少し説明しておこう。」
「…。」
「私は、地球の生命体ではない。
古代から、君達の住む地球に
立ち寄る、異星人なのだ。」
「…。」
「はっはっはっはっは。
そう。未だ判るまい。」
「…。」
「友だちには成れそうかい。」
ロコスはにっこり笑った。
「はっはっはっはっは。
そう。此れは良かった。」
エーゲ海は
アテネのサロニコス湾の
夕陽が
きらきらと
銀砂をまぶした様に
煌めいた。
「何か希望は有るかね。」
ペガススはロコスに尋ねた
ロコスは
かるく顔を横に振った。
「そうだ。」
「…。」
「空を飛んで見たいと思わないかね。」
するとロコスの瞳がきらっと輝いた。
「うん。」
「さあ。乗りたまえ。」
ペガススはロコスが乗り易いように、
ひざまずいた。
ロコスがペガススの
大きな背中に跨がると
やがてペガススは
真っ白い大きな翼を
大きくひるがえすと、
ふわっと
宙に舞い上がった。
「嗚呼。凄い。」
其れきりロコスは言葉を失ってしまった。
エーゲ海も
サロニコス湾も
広大な大地も
あっと云う間に
下に広がる
一大パノラマであった。
空は群青色に、
そして一番星が輝き
あちこちに
小さな星々が輝きだした。
海はもう、深いネービーブルーに
沈み込んだ。
港の家々が灯りを点し出した。
「あっ。」
ロコスは大事な事を思い出した。
「お家に帰らなきゃ。」
「家だって。それは、大事だ。」
ペガススは大きく反転して、
ロコスの家に向かった。
イリソスの丘のふもとに
あるロコスの家は、
とうに夕暮れ時を過ぎていた。
家の裏手にある糸杉の後ろに
ペガススは降り立った。
物音に驚き、
家の中からは
ロコスの母親が飛び出して来た。
「ロコスどうしたんだい。
こんな遅い時間まで。」
「ごめんなさい。」
「どこに居たの。」
「道に迷って…」
「お前が此の辺りで、
道に迷う事があるのかい。」
遠くでペガススは、
こちらをじっと見つめているが、
ロコス以外の人間には
ペガススの姿は見えないらしい。
「まあ、たまの事だ許してあげなさい。」
優しい父はロコスの事を大目に見たいようだ。
悲しい顔をし乍ら、
ロコスはペガススを
目で探したが、
もう、ペガススは飛んで行ったのか。
見えなかった。
ロコスは
その夜夢を見た。
暗い大地は何処迄も広く、
沢山の街の灯りが
銀河のように煌めいた
ロコスはと云えば
まっ白なペガススの羽の間に
座って
天高く、
もはや、
月へ手が届くほど
空高く飛んで居た。   
遠い空の
果から、
大きな流星が、
ごおぅっと
音を立てて
通り過ぎ
シリウスや
ケンタウロスが
ギラギラと 怪しく
輝いていた。
三つ目の流星が、
ペガススの近くを
すり抜けて、
あっと云う間に
ペガススは落ちて行った。
「ああ〜〜恐いよう。」
ロコスは其の時
ハッと目が醒めた。
でも恐かった。
でも、すてきだった。
そうこうと、
夢を見ている内に、
「ロコス起きなさい。
朝ですよ。」
母の声。
一日の始りでした。
しばらく何事も無く
ロコスも学校の仲間との
遊びに夢中になって居た。
その日の夕暮れ
食事はロコスの
大好きなお肉のスープでした。
一家の団らんの後、
「ママお休み。」
「パパ。」
「お休み。」
温かいベッドで
ロコスは夢の世界でした。
夜中の10時頃、
窓の外から、声が聞こえます。
「ロコス居るかい。」
目がさめて、起き上がり、
窓を開けると
濃紺の空に、白い銀河が
そら一杯に広がっていました。
「ペガススかい。」
眠い目をこすりながら、
窓の外へ乗出すと、
そこには、
純白の翼を広げた
ペガススが居た。
「大空に散歩はどうだい。」
「行くよ、行くよ。」
ペガススの翼に
飛び乗ると、
羽はするすると広がり、
満天の大空へ羽ばたくのだった。
(いいなぁ〜)
今夜も銀色の月が
空高く輝き、
遠く水平線の彼方に、
小さく船の灯りが
瞬いて居た。
すると
小さな蜻蛉くらいの
小人が
キラキラと
輝き乍ら
ペガススを取り巻いた。
「これは何。」
「はっはっはっはっは。」
「光の精を知らなかったのかい。」
「学校では習わなかった。」
「習わなくても、存在するものは有るのさ。」
「ふうん。」
古代ギリシャはアテナイ、
テーバイ、
コリントスなどのポリスの立ち並ぶ、
エーゲ海、
イオニア海が潤す、
いにしえに栄えた國であった。
アテネはサロニコス湾にめんした、
最大の都市で有ったが、
エーゲ海が潤す、
多くの島々は昔から変わらない佇まいを成していた。
この村はイリソスと云う、
古代から現存する村であった。
ギリシャは雨の少ない温暖な地で、
古来から漁業の盛んな國である。
この小さな村には、
ロコスと云う、
七歳の少年が居た。
人見知りの有るはにかみ屋、
色白の母親似の小さな男の子であった。
「ロコスよ起きなさい。」
「かあさん眠いよ。」
「ロコスよ。」
ロコスが目を覚ますと
暗い部屋に
天窓から、
蒼い光が差し、
部屋の中は
まるで、
海の中のように
透明だった。
窓の外には
真っ白なペガススが
羽をたたみ、
こちらをじっと見つめ乍ら
語りかけていた。
テレパシーなんだ。
「ロコス。
もっと世界中を眺めて見ないかい。」
「世界中。」
「そうさ。東へ行くと、数々の
砂漠や、山脈を超えて、
塩の湖や、
炎の山。広大な緑の原野。
更に広い海を渡ると、
黄金の國、ハポンがある。」
「黄金の國、ハポン。」
「そうさ、儂も未だ見た事は無い。」
「行こうよ。」
ロコスはふと、両親の事を思った。
「はっは。直ぐ帰れるさ。」
「そうか。」
ロコスは深く考えずに
行く事にした。
「ちょっと待って。
お父さん、お母さんに手紙を書くよ。」
「うん、それは良い。」
「では、行こうか。」
ロコスが頷くと
ペガススは大きな青白い羽を
大きく広げ、彼を乗せた侭
緩やかに羽ばたいた
すると地上は
緩やかに下降し、
ロコスの視界は
徐々に広がって来た。
空は暗くて蒼い色に沈み
満天の星が
怪しく煌めいた。
東の空には、
今昇り始めた三日月が
優々と水平線の上に
佇んでいた。
「あっ。」
一瞬、
ロコスは、
お母さんの声が聞こえたような気がした。
なぜか、
お母さん、
お父さんに
申し訳無い気がした。
「ロコス、どうした。」
ペガススの声が、
冷たく、意地悪に聞こえた。
ロコスの家は、
最早遥か彼方、下のほうに
小さな灯りだけが、
寂しく見えた。
「おかあさ〜ん。
おとうさ〜ん。」
ロコスは無性に涙が
こらえきれずにいた。
「今更、後悔をして居るのかな。」
「…。」
その時天上界から、
銀の雨が降り注いで来た。
嗚呼、
あれは流星雨だ。
突然空は明るく輝き、
東の空には黄金の虹が現れた。
しかし、
それでもロコスの心は晴れなかった。
ペガススの背に跨がった人間は
簡単には
降りられないのだ。
「降りたいのかね。」
「…。」
ロコスはだんだんペガススが
恐くなって来た。
「ほら、見てごらん。
あんなに虹がきれいだよ。」
「…。」
ロコスはもう、
世界一周の旅は
どうでも良くなって来ました。
(ああ、お家へ帰りたい。
あんなに優しかったお父さん。
口うるさいけど、僕を一番愛してくれた
お母さん。)
「ほほう。ホームシックかね。」
「お…」
「お母さんが恋しいかね。」
「いつも、居るのが当たり前。
そんなお母さんだったんじゃ
ないかね。」
そんなお母さんでも
今のロコスは
世界中で一番
愛している人。
ロコスは何度も
泣いて居た。
そして気が着くと
ロコスはいつの間にか
我家のベッドの中に居た。
小鳥達は既に起きだし、
軽やかに
鳴いて居た。
部屋の向こうに
お母さんの呼ぶ声がした。
「ロコスいつまで寝てるの。」

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