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イマージュツアー21

グレートリバー物語り5

黄金華咲く

 グレートリバー、それは偉大なる大河。人間は三千年の歴史の中で、釈迦、耶蘇、マホメッドと、その他多くの霊的指導者、聖人を排出して来ました。その起源は一つの見えざる大いなる源泉で有る事は、疑い様の無いものであります。多くの支流、本流を伝えて、軈ては大河は、大海原に一つに注がれるものであります。生長の家は、開祖の谷口雅春尊師の、求道の末の「今起て!」の霊的な言葉に始りました。いま人類は多難な時代を目前にしています。世界的な経済難、災害、疫病、紛争。国際的救済機関が幾つ出来ても、人々の心が変らなければ、この難局は越えられないと云うもの。今こそ、あらゆる人々が万教帰一の元に人間愛で、救うべき大河となって、進もうではありませんか。

本章とは余り関係の無い内容でございますが、人と人とにえにし、を不思議に思うこの頃です。人一人生きる中に様々な出会いがあり、人の織り成す人生ドラマに或時は涙します。稚拙な内容ではございますが、人生の河は尽きず、永く、面白く私達に様々な事を教えてくれます。

縁(えにし)

知るひとの無き

であい

「花居らんかね〜」
「花居らんかね〜」
大原娘の売り声が聞こえて来る。
広大な屋敷である。
「ちょいと尋ねますが
こちらは、どちら様のお屋敷で…」
すると中年の商人が、
「鬼より怖い六波羅様ですがな。」
「へ〜此があの…。」
「お隣が泣く子も黙る平氏のお館で…。」
それは長く高い塀で
囲まれ、
栄華の極みの象徴で有った。
塀の内側では、
何やら楽しげに、
人々の笑い声や
さざめき、
音曲が漏れ聞こえて来る。
「我が世の春ですな。」
巷はまだまだ肌寒く早春では有るが、
此だけは愈、
春めいて居た。
突然塀の中で何かが壊れる音がした。
続いて怒鳴り声やら、
駆け回る音、
突然裏門をこじ開けて少年の様な人影が飛び出した。
「あっ。」
一瞬、時が止まった気がした。
目にも止まらぬ一時。
「待て待て。」
裏門からは十人程の侍共がおっとり刀で飛び出して来た。
「は、速い。」
少年は脱兎の如き勢いで去っていった。
「ちっ。感心して居る場合か。」
「ああ速くちゃ顔も判らん。」
忿懣やる方ない様子で去った。
「くすっ。」
偶々居合わせたのは
三人の白拍子だった。
二人は十六、七歳
小柄な一人は十二、
三歳であろうか。
「何か面白い事があり申したかいのう。」
年長の娘に尋ねられ、
少女は大きく頭を振った。しかし、
その瞳には意外な光景が焼き着いていた。
目の前の屋敷の裏門が無理矢理押し開かれ、
稚い少年が、ましらの様な素早さで
抜けだして来た。
時が永遠に止まった瞬間で有った。
共に幼かった二人の前世からの、
えにし、約束事だったので有ろうか。
ほんの一瞬、言葉も交わさず。見つめ合う二人。
「居た。あの人だ。」
戦乱の世の中で、懐かしい魂の半分に出会えた安堵感。
自分だけの秘密で有った。

 
 明日知らぬ 我が身と思へど 
 暮れぬ間の 今日は人こそ 悲しかりけれ


都の片隅にひっそりと
暮らす女が居た。
平家一族の隆盛ぶりとは対照的に
心は虚な日々だった。
質素な屋敷とも言えない
仮住まいの前に怪しい人影を見つけ、
常盤は意を決して叫んだ。
「これっ。何者じゃ。」
侍の妻としての気負いか、
意外な程相手を怯ませた。
「…。」
「もしや…。」
常盤の心に戦慄が
走った。
彼女をまじまじと見つめる潤んだ眼が
忘れもしない
あの人に生き写しだった。
「牛若かい。」
「遮那王です。」
「嗚呼。何で来たのじゃ…。」
「…。」
常盤の言葉に驚いたのは、
遮那王であった。
じっと母を
夢にまで見た母に、
何で会いに来ては
成らないのか。
じっと我が子を
かき抱き、
「良くぞ生きていてくだされた。」
「…。」
「どれ、母にしっかりと、
お前様の顔を拝ませておくれ。」
「どうしてこんな危うい所までやって来るんだい。」
「母上…。」
「まあ語らんでも判って居るよ。」
「母上。」
「何じゃ。」
「父上の事を聞きとうございます」
「父上が恋しいか…。」
「母上も恋しかった…。」
「ほっほっ…むむっ。」
益々心は高ぶるが、
母は気を取り直し、
「貴方の父上は立派な武将でした。」
「…。」
「他に聞きたいか。」
「…。」
「武将として如何に秀でて居ようと、
女子の我には知る術もない。」
「はい。」
「安心なされ。良き父で有った。」
「…。」
遮那王は何も云う事は無かった。
「わしは帰る。」
「そうか。」
帰したくはなかろうが
母は決して引き止めは
しなかった。
立ち去る遮那王も
後ろ髪を引かれる想いを
振り捨てた。
明日知らぬ 
我が身と思へど 
暮れぬ間の 
今日は人こそ 
悲しかりけれ
京の裏町を
遮那王が歩いて居ると
悪童の群れが騒いで居た。
「どうした。どうした。」
「こいつら、白拍子め、
俺達の前では、
踊りたくは無いそうじゃ。」
すりと「いいえ、お許しを。」
「嫌なら良いぞ。」
「こっちへ来い。」
背の高い悪童が、
か弱い白拍子の手を無理矢理引いて行こうとした。
「お許し下され。」
「あっはっは。そうは参らん。」
すると、
何処から参ったのか、
ましら、の様に
飛び出した人影が有った。
「待て。」
「しゃらくさい。」
「引っ込んで居ろ。」
突然の闖入だが、
童の様な小者と侮ったか、
身の丈の大きい悪童は
持って居た七尺程の杖を、
振り返り様に払った。
「おうっ。」
勿論遮那王であった。
振り払われた
杖を見事にかわし
くるりと身を翻しては
相手の杖を奪い、
ぴしりと反撃を
食らわした。
余りにもの見事さに
見る者皆
只、うっとりしたそうな。
彼は即、脇目も振らず
去らんとするや、
しげしげと
遮那王を見つめる視線を感じた。


思わず交はされた眼差し
一瞬にどきりとした遮那王であった。


 我が戀は 深山隱れの 草為れや
 繁さ増されど 知る人の無き


鞍馬の竹林を巡る山道が有った。
鬱蒼とした薄暗い小路を若者が駆ける
「お〜い」
「遮那王」
「牛殿」
「…。」
若者は振り返りはしない。
ひたすら走る。
やがて坂道を登り切ると
はげ山の頂きに出た。
「うぉ〜」
さぁて、
何事が始まったか。
「いぇ〜いっ」
あっちでも、こっちでも
「やっとう」が始まった。
「だだだっ」
「それ〜っ」
「遮那王さま」
「待てぃ」
「ふっはっは。上様、戦陣にて、
待ったは御座らん」
「むむっ。」
「今日の稽古は終いじゃ」
「殿、逃げるは卑怯でござる」
「はっはっは」
「はっはっは」
「遮那王様」
「見ましたぞ」
「ん。何の事じゃ」
「昼間、洛中での」
「わしには何の事やら…」
自称カラス天狗と名乗る
一座の長とおぽしき男は
何とも可笑しさを堪えつつ
「殿は我等の盟主。
白拍子如きに関わりて、
あたら我等源氏党の悲願を、お忘れ無き様」
流石に遮那王も煩さそうに聞き流した。
「殿はあの女子衆に…」
周りの男が云った。
「不粋な事を申すな」
「…」
遮那王が耳元を真っ赤にしているのが窺えた。
「此の話しは止そう」
花を見れば
目に浮かび
星を見上げては
思い出す。
あのときめきは
何事なのか
しばし呆然の
若い魂で有った。


 時しもあれ 秋やは人の 別るべき 

 在を見るだに 戀しき物を

「若。」
ある日、
そんな遮那王を呼び止めた男が居た。
日焼けで
赤銅色の顔を綻ばせた
壮年の商人だった。
「き、吉次ではないか」
「ご機嫌麗しゅう…」
「爺も恙無いか」
「はっはっは。爺はお止し下され」
金売り吉次は元々源氏恩顧の武将だったそうである。
「殿。」
「愈で御座る」
京の都で思いのままに暮らして来た遮那王と
家来達の周囲にも平家の探索の包囲網が一段と狭まって来た。
遮那王も六波羅の輩達を翻弄して喜んで居る場合でも
無かったのである。
「来たか。その時が。」
「此の吉次、
若様のみちのくへの旅路をお守りすべく
屈強の兵をばご推奨致しましょうぞ」
「我が賤ヶ家へ…」
「うむ」
京の都の五条あたりに
吉次の隠れ屋敷が有ったとか。
「参るぞ」
「光栄に存じます」
話題は当然、平家の動静、
愈源氏武将の末裔への
探索は死に物狂いであった。
どうして平家の追跡をかわすか。
源義朝の遺児が旗揚げするに当たり、
みちのくの藤原氏の
擁護を吉次は考え、
手筈して居たらしい。
「ま、吉次のささやかな持て成しにてございまする」
「うむ。忝ない。」
まだ若い若木の成長に目を細める吉次であった。
「さて、馳走に成った。」
「遮那王様、お泊りを…」すると
「それには及ばん。」
「足元が暗うござります」
「はっはっは毎日カラス天狗と鍛えて居るわ」
「はっはっは。それは頼もしい。」
「では参る。」
「供を一人お付け致しまする。」
「はっはっは。良きに計らえ。」
ふらりと吉次の屋敷を出た遮那王の後ろ姿を、
屈強な若者がつかず離れず。
追いて行った。


京の都の五条とは云え
夜ともなれば百鬼夜行、
魑魅魍魎の世界、
大人でも心して
出歩く事はしないもの。
やおら遮那王は懐より笛を取出し、
たえなる一曲を吹き始めた。
此の笛こそ常盤御前から
形見に戴きたる「草苅笛」の名笛といふ。
その音は隆々と鳴り響き、
草木の精をも酔わせたと云う。
その頃、五条界隈には
こんな流言が聞かれたと云う。
五条の橋には怪しい大男が
夜な夜な現れては、
悪さをするとか。


その夜も遮那王が
橋を通り掛かると
五条橋の上に
怪しい人影が有った。
遮那王些かも動じず、
ひたすら夢中に笛を
吹いた。
その頃、五条界隈には
こんな流言が聞かれたと云う。
五条の橋には怪しい大男が夜な夜な現れては、
悪さをするとか。
その夜も遮那王が
橋を通り掛かると
五条橋の上に
怪しい人影が有った。
遮那王些かも動じず、
ひたすら夢中に笛を吹いた。
月は煌々と照って居た。
薄明かりに照らされ、
夜目に浮かび上がる大男は
不敵な笑いを浮かべて居た。
「待たれい。」
「…。」
笛に夢中なのか遮那王は
一向に気づく様子も無い。
怪僧は怒り立って行手を塞いだ。
遮那王は行手を塞がれ
漸く眼を上げた。
「何者。」
すると
後方に居た吉次の家来が
「お待ち下され。」
「出るな。」
遮那王は強く制した。
「ほほう、此のわしを恐れんとは大した童じゃ。」
童と云う言葉に遮那王の眼はぎらりと光った。
「何用だ。」
「出るな。」
遮那王は強く制した。
すると僧は不機嫌な顔で
「何を小生意気に。つべこべ言わずに、
その腰の物をさっさと置いて、
とっとと立ち去れ。」
「笑止千万。何でお前を目の当たりに、
逃げ去らねばならんのか。」
怪僧は怒った。
「小僧だまれ。」
両手に薙刀を持ち替えると
「ならば…。」
眼にも見よ。
とばかりに
真上から切り付けた。
処が流石、鞍馬山でカラス天狗と
やっとうの稽古に明け暮れる
遮那王にとって造作の無い事。
ふわっと跳ね上がるや
難無くかわしてしまう。
「小癪な。」
怪僧はと云えば、
端はその気ではなかったが腹立ち紛れに、
つい本気を出してしまった。
薙刀を大きく振りかぶると横殴りに払った。
子供相手に大人げ無い、
と一瞬思ったが、
手元にがつんと
衝撃が走った。
何と勢い余って、
橋の欄干に
大事な薙刀を切り付けてしまった。
「はっ。」
一瞬、怪僧は相手を見失ってしまった。
遮那王は相手の薙刀の
大振りの動きをかい潜り、
欄干の上に飛び乗り
すかさず相手の胸倉を
蹴り飛ばしたのである。
隙を突かれたとは云え
怪僧は負けを認め、
痛く恥じた。

「どう居たした。」
すると怪僧は膝まづき
「お見それ居たしました。」
「…。」
「某、武蔵坊弁慶と申す。
未熟者故、毎夜此橋のたもとに待伏せ、
裏なり侍の持ち物を争奪せる悪行三昧。」
「噂に聞いておる。」
「…」
「ならばわしは帰る。」
「し、暫しお待ち下され。」
「わしは出来損ないの坊主に用は無い。」
「かっはっはっは。これは手厳しい。」
「帰る。」
「せ、せめてお名前を…」
「通り縋りのそなたに名など無用。」
「せ、せめてお名前を…」
「通り縋りのそなたに名乗るは無用。」
怪僧は突然、遮那王の前に平伏すと、
「後生で御座る。」
真っ暗な古都の五条の橋の袂。
月明かりの下で、
不思議な主従の出会いがあった。
「はっはっは。」
「…。」
「可笑しい奴。」
「何とぞ。ご家来に…」
「ふむ。家来か…。」
「…。」
「わしには持ち合わせる物も位階も無い。」
「地の果て迄…。」
「仕えると申すか。」
「御意。」
「わしは知らん。」
「は、有り難き幸せ。」
遮那王は振り返る素振りも見せず歩き始めた。
弁慶某は遅れてはならじとばかりに
追いかけて行った。
それを見送る吉次の家来も
呆れ果てるやら可笑しいやら…。

 我が戀は 深山隱れの 草為れや 
 繁さ増されど 知る人の無き

秋が来て都を取り巻く山々の木も愈朱く染まる頃、
あちこちの神社仏閣で祭事が催された。
その日は余りにも日和が良いので、
遮那王は家来の弁慶、
飛び烏を引き連れ
気晴らしにと巷に繰り出したのであろうか。
あちこちで里人の喚声やら祭囃子が聞こえた。
「秋でござる。」
「艶やかなものでござる。」
「弁慶に似合わぬ言葉じゃ。」
「はっはっは。遮那王さまそれは心外な。」
「すまぬ。」
「はっはっは。いえ、
良いんでございますよ。」
「弁慶殿のご面相じゃ、
都の、おなご衆、童共逃げ申す。」
「飛び烏め、調子に乗りよって。」
「はっはっは。」
遮那王が二人を従えて、
里の鎮守に詣でると、
境内には人だかりがあった。
里人の間に分け入ると、
女舞の奉納であった。
ふと見ると三人の白拍子の優雅な舞姿に、
皆うっとりと佇んで居た。

 

 知る人のなき

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○世界平和の祈り

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板橋相愛会謹製

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